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​海外に住んでいる子の学習の壁

今回は『海外に住んでいる子の学習の壁』についてお話をしたいと思います。

私は、日本人学校・補習校に務める前に、

現地校に通う子を対象にした補習塾に勤めていました。

その塾では、幼稚園から高校生まで教えていましたので、

各学年の学習のポイントを知ることができました。

海外に住んでいる小学生には、以下の2つの時期に学習の壁があると私は思っています。

どちらも、漢字力に直結しています。

今回は、その具体的な例と理由、そして私が考える対策を書いています。

 

プレッシャーをかけるつもりは全くありません!

その学年の前後になりましたら、少し気に留めておいていただけると、

ご家庭での学習がスムーズに進むかと思います。

参考になればうれしいです。

 

1)3年生の国語の壁

簡単に言うと教科書が自力で読めなくなります。

ただし、読み仮名をつけると読めます。

 

この段階で、読み仮名にたよって読んでいると、これからずっと読み仮名なしでは読めなくなってしまいます。

読み仮名をつけることは間違いではありません。

読み仮名は鉛筆で書き込み、すらすら読めるようになったら、

読み仮名を消しゴムで消して読むといいでしょう。

 

ここで問題になるのが、

3年生の国語の教科書に出てくる読み物の長さが1・2年生の時と比べて非常に長くなることです。

そのため、すらすら読めるようになる前に、

そして、教科書に書いた読み仮名を消す前に、

そのお話の音読の宿題が終わってしまうのです。

つまり、自力で読めないうちに次のお話に移ってしまうということです。

これを繰り返していては大変です!

3年生以上になって、音読の時間を1・2年生の頃と同じ時間しか費やしていないようでしたら、

実質の学習量は減っているはずです。

この壁を越えるためには、

学年が上がってもしっかりと音読ができるように、時間も質も確保してほしいと思います。

 

 

2)5年生の算数の壁

 

国語は苦手だけど、算数は得意だから大丈夫だろうと思っているお母さんお父さん!要注意です。

5年生に上がると、「これは掛ける?割る?」という問題が多くなります。

日本に住んでいる子でも苦労する問題です。

海外に住んでいる子は、その文章題の意味がつかめるかどうかが加わります。

4年生までは、

かけ算を習っている時には掛ければいい。

わり算を習っている時には割ればいい。

しかもわり算は、大きい数から小さい数を割れば良いので、

文章を読まなくてもだいたいの問題は解けてしまうのです。

 

5年生になると、それが通用しなくなります。

この壁を越えるためには、

文章題は、「文章題」という「科目」だと思ってご家庭で取り扱う覚悟が必要です。

もしも、5年生になって算数の点数が伸び悩むようでしたら、

日本語で苦労しているのか、

算数で苦労しているのか、

をしっかりと見極めてください。

それにより対策が異なると思います。

(読み仮名をつけると解けるようでしたら、日本語で苦労しているということです。)

 

もちろん、これは私の経験則からの意見です。

これからこの学年を通過するときに気にしていただければと思います。

 

何事もなくこれらの学年を通り過ぎたお子さんは、それで安心ということではありません。

学年が上がれば、日本語に割くべき時間もさらに必要になってきます。

引き続き効率よく学習を進めていただくとよいかなと思います。

 

もしも、既にお子さんが日本語で苦労しているのであれば、

まずは、読んで意味をつかむことを最優先に進めていけば、立ち止まる必要はありません。

ぜったいに日本語を諦めることのないようにしてください!

 

今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

 

以上、ニュースレターでした。

ニュースレターをメールでお送りした後に下のような質問をいただきました。

私の回答も合わせてご覧ください。

ーーーーーーーーーーーーーーーー 

永松先生、

メールありがとうございました。

メールの中で 読んで意味をつかむことを最優先にと書かれていましたが、具体的に何をすればいいのでしょうか?

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

↓質問に対する回答です。

 

●●様

 

ご連絡ありがとうございます。

 

最後の一文のところですよね。

実は、何度か書き直した箇所なのです。

どう表現すれば伝わるかなと思いながら書きましたが、

そうですね。具体的に書けばよかったです。

気づきをありがとうございます。

 

「読んで意味をつかむこと」についてです。

 

国語でも算数の文章題でも、声に出して読めるかどうかを

確かめてもらうといいかと思います。

読めなければ、読み方を教えてあげる。

意味を知らないようでしたら、意味を教えてあげる。

この繰り返しになるかなと思います。

という意味を込めて書きました。

 

日本語で苦労している子は、

 

・漢字では読めないけれど、読み方が分かれば意味が分かる言葉

・何となく読めるけれども、その意味を知らないという言葉

・読めなくて意味も知らない言葉

 

低学年のうちは、一番上の言葉が多いと思います。

学年が上がると、下の2つの言葉が圧倒的に多くなります。

 

まずは、読めるかどうかを音読で確かめていただきたいと思います。

算数の文章題もぜひ読んでもらいたいです。

そして、知らない言葉が出てきたら、

その言葉の意味をぜひお家の方から伝えてあげてください。

お子さんに「この言葉、知っている?」と聞いて、

知らなくても「知っている」と答える場合もあります。

恐らく知らないだろうなと思う言葉は、

こちらから説明をしてしまうように私はしています。

(学年が上がると、自尊心も大切にして、学習を進めるようにしています。)

 

日本語で苦労している子は、

今持っている日本語の言葉の量が

その学年で使っている教科書に比べて少ないだけです。

決して日本語が難しい訳ではないと私は思っています。

母親から学んでいる言語なのですから、

絶対に大丈夫です。

お子さんに言葉を入れてあげるという気持ちでぜひ取り組んでいただければと思っています。

いろんな角度から私も教材が作れないか、引き続き日々考えていきます。

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