第10回 漢字の間違いは、覚えるチャンス。「似ている漢字」から子どもが学んでいること
「昨日も練習したのに、また同じ漢字を間違えている」
お子さんの漢字練習を見ていて、そんなふうに思ったことはありませんか。
線が一本多かったり、足りなかったり。
「日」と「目」を間違えたり。
漢字の一部分が、別の漢字と入れ替わっていたり。
何度も同じ間違いをしていると、つい「ちゃんと見て覚えなさい」と言いたくなるかもしれません。
でも、私は、漢字の間違いには、子どもが漢字を覚えるための大切なヒントが隠れていると思っています。
もちろん、間違ったまま覚えてしまっては困ります。
大切なのは、間違えないことだけではなく、間違えたあとに何に気づくか、ということです。
子どもは、漢字を「部品」で見ている
漢字を覚えるとき、よく使われる方法の一つが、部首に注目することです。
例えば、「海」「池」「泳」には、どれも「さんずい」があります。
さんずいは水に関係することが多いため、子どもたちも、新しい漢字にさんずいを見つけると、
「水に関係があるんだね!」
と、自信を持って答えてくれます。
漢字の形と意味を結びつけて覚えることは、とても大切です。
ところが、子どもたちと話していると、もう一つ面白いことに気づきます。
子どもたちは、部首だけを見ているわけではないのです。
今までに習った漢字の中から、似ている形や同じ部品を探していることがよくあります。
例えば、5年生で「基準」の「基」を学習するときのことです。
私は、つい下にある「土」に注目してしまいます。
ところが、子どもたちは違います。
「『学期』の『期』と同じ形がある!」
「『寒い』の『寒』に似ている!」
そんな声が出てきます。
確かに、「基」と「期」には共通する部分があります。
一方、「基」と「寒」は似ているところもありますが、よく見ると形が違います。
それでも、子どもが「似ている」と感じたことには意味があると思うのです。
知っている漢字と新しい漢字を結びつけ、似ているところや違うところを見つけようとしているからです。
「こおりまつ先生」と呼ばれた理由
ここで、私自身の名前にまつわる話を一つ。
私の名字は「永松(ながまつ)」です。
「永」は、小学校5年生で学習する漢字です。
そのため、まだ習っていない3、4年生の子どもたちは、私の名前を読むときに、知っている漢字を一生懸命使おうとします。
ある子は、
「『氷』に似ているね。こおりまつ先生!」
別の子は、
「『泳ぐ』に似ているから、およまつ先生!」
と呼んでくれました。
もちろん、どちらも正解ではありません。
でも、なかなか面白いと思いませんか。
子どもたちは、でたらめに読んでいるわけではないのです。
「氷」と「永」の形が似ていることに気づいたり、「泳」の中に「永」があることを見つけたりしています。
今までに学んだことを使って、まだ知らない漢字を何とか読もうとしているのです。
私は、こうした姿を見ると、子どもたちなりに漢字をよく観察しているのだなと感じます。
そして、「似ているけれど、ここが違う」という経験が、その後の漢字学習につながっていくのではないかと思っています。
ちなみに、子どもたちが5年生になって「永」を習うときには、この話を思い出してもらえます。
先生の名前を間違えた経験も、漢字を覚えるきっかけになるのです。
間違いの中には、子どもの考えた跡がある
漢字の間違いには、いろいろな種類があります。
線が一本多い。
「月」の部分が「日」になっている。
右と左が反対になっている。
似ている別の漢字を書いている。
こうした間違いを見ると、大人はどうしても「正しいか、間違っているか」で判断しがちです。
もちろん、正しい漢字を書けるようになることは大切です。
ただ、少し見方を変えてみると、その間違いから、子どもがどのように漢字を覚えようとしているのかが見えてくることがあります。
例えば、「晴」の右側を「目」と書いてしまった子がいたとします。
単に形を覚え間違えたのかもしれません。
でも、「日」と「目」が似ているために混同した可能性もあります。
そこで、正しい漢字と見比べてみます。
「あれ? こっちは横の線が一本多いね」
子ども自身がそう気づくことができたら、その間違いは、二つの形の違いを確かめる機会になります。
間違えることそのものが大切なのではなく、間違いをきっかけに、違いを見つけることが大切なのです。
家庭では「どこが違うかな?」と聞いてみる
では、ご家庭でお子さんが漢字を間違えたとき、どのように関わればよいのでしょうか。
私がおすすめしたいのは、すぐに正しい答えを教えるのではなく、まず正しい漢字と見比べる機会をつくることです。
例えば、漢字の練習が終わったあとに、間違いを見つけたとします。
そんなとき、
「ここが違うから、もう一回書きなさい」
と言う代わりに、
「おしいね。ここまでは合っているよ」
「お手本と比べて、どこが違うと思う?」
と声をかけてみてはいかがでしょうか。
漢字全体をバツにするのではなく、合っている部分にも目を向けるのです。
そして、子どもが違いを見つけられたら、
「そうそう、そこが違うんだね」
「よく気づいたね!」
と伝えます。
大人に間違いを指摘されるだけでなく、自分で違いを発見する。
この経験を積み重ねることで、漢字の形をより注意深く見るようになるかもしれません。
もちろん、子どもによっては、なかなか違いを見つけられないこともあります。
そんなときは、無理に答えを探させる必要はありません。
「この部分を見てみようか」
と、少しヒントを出してあげればよいと思います。
大切なのは、間違いを責めることではなく、正しい形に気づけるように手助けすることです。
間違いを直すなら、できるだけその場で
もう一つ、大切にしたいことがあります。
それは、間違った漢字をそのままにしないことです。
「間違えてもいい」というのは、「間違ったままでいい」という意味ではありません。
せっかく違いに気づく機会があるのですから、できるだけ練習した直後に確認したいものです。
時間がたってから間違いを指摘されるよりも、自分が書いた漢字を覚えているうちに見直した方が、何を間違えたのかを確かめやすいでしょう。
ただし、何度も書き直させる必要はありません。
正しい字と見比べて、違いを見つけ、もう一度丁寧に書いてみる。
まずは、それだけでもよいと思います。
間違えた漢字を何回書き直したかよりも、何が違っていたのかを理解できたかを大切にしたいのです。
漢字の間違いを、親子で発見する時間に
漢字の練習というと、どうしても「正しく書くこと」「間違えずに覚えること」に意識が向きます。
もちろん、それは大切な目標です。
でも、子どもたちは、私たち大人が思っている以上に、いろいろなところを見ながら漢字を覚えようとしています。
知っている漢字に似ているところを探したり、共通する部品を見つけたり。
ときには、私の名字を「こおりまつ」と読んでしまうこともあります。
そんな間違いの中にも、子どもなりの発見があります。
もし、お子さんが漢字を間違えていたら、すぐにバツをつける前に、少しだけその漢字を一緒に眺めてみてください。
「どこが似ているかな?」
「どこが違うかな?」
そんな短いやり取りが、漢字の形をじっくり見るきっかけになるかもしれません。
間違いは、ただ直すだけのものではなく、学ぶきっかけにもなる。
私は、子どもたちとの日々のやり取りから、そんなことを感じています。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
