第2回 読めない漢字は、書けません。
- 8月2日
- 読了時間: 3分
更新日:8月8日
「漢字テストに向けて、毎日こんなに書いているのですが、なかなか点数が取れないんです。」
これまで、海外にお住まいの保護者の方から、このようなご相談を何度もいただいてきました。
漢字ノートは何ページも埋まっています。
同じ漢字を何度も何度も書いています。
それなのに、テストになると書けない。
私は、そのお話を聞くたびに、まず学習の様子を詳しく教えていただくようにしています。
すると、多くのご家庭で共通していたことがありました。
勉強を始めると、まず漢字ノートを開き、ひたすら書くことから始めていたのです。
その様子を聞いて、私は心の中で「やはり」と思いました。
書く練習は、とても大切です。
でも、その前に、もっと大切なことがあります。
それは、「読むこと」です。
私はその保護者の方に、こんな提案をしました。
「今日は、漢字ノートではなく、先に漢字ドリルを開いてみてください。
そこに載っている熟語を、お子さんと一緒に声に出して読んでみてください。
すらすら読めるようになってから、書く練習を始めてみませんか。」
最初は、
「読むだけで変わるのでしょうか。」
と半信半疑だったそうです。
ところが、その次の漢字テストでは少し点数が上がり、その次、そのまた次と、少しずつ結果が変わっていきました。
もちろん、読むだけですべてが解決するわけではありません。
それでも、「読めるようになってから書く」という順番に変えただけで、漢字への苦手意識が少しずつ減り、自信もついていったのです。
私は、このような経験を何度もしてきました。
だからこそ、長年変わらず大切にしている考えがあります。
読めない漢字は、書けません。
これは決して、「書く練習は必要ない」という意味ではありません。
書けるようになるためには、もちろん書く練習は必要です。
しかし、その土台になるのが「読めること」です。
例えば、「緑」という漢字。
見てすぐに「みどり」と読めなければ、その漢字の形は頭の中に定着しません。
形があいまいなまま何度も書こうとしても、覚えにくく、すぐに忘れてしまいます。
一方で、何度も見て、何度も読み、
「あ、この漢字だ。」
と自然に分かるようになると、頭の中に漢字の形が残ります。
その状態で書く練習をすると、驚くほど覚えやすくなるのです。
私はこれを、
「読むことが、書くことの準備」
だと考えています。
日本で生活している子どもたちは、毎日たくさんの漢字を目にしています。
学校の掲示物。
本。
テレビ。
スーパーの商品。
道路標識。
生活そのものが、漢字に囲まれています。
だから、意識していなくても、「読む経験」を毎日積み重ねています。
ところが、海外ではどうでしょうか。
日本語に触れる時間そのものが限られています。
漢字を見る機会も、日本に比べると圧倒的に少なくなります。
つまり、日本の子どもたちと同じように書き取りをしていても、「読む経験」が不足していることが少なくありません。
だから私は、海外で暮らす子どもたちには、まず読む力を育てることを大切にしています。
読める漢字が増えると、文章が読めるようになります。
文章が読めるようになると、意味が分かります。
意味が分かると、漢字は忘れにくくなります。
そして、その先に「書ける」があります。
この順番が、とても大切なのです。
「書けるようになってほしい。」
そう願うなら、まずは毎日少しずつでも、読める漢字を増やしてあげてください。
遠回りのように見えて、実はそれが一番の近道なのです。
⸻
次回は…
海外では、日本にいる子どもたちよりも漢字が難しくなる理由があります。
それは、勉強時間だけでは説明できない、大きな環境の違いです。
次回は、その理由についてお話ししたいと思います。
